私生活が忙しい時ほど、自己啓発系の本から離れて小説を読みます。
特に、人々の優しい交流を描く作品が好き。共感と追体験を通して自分の経験値が増えるだけでなく、心の浄化作用も期待できます。
今回読んだのは、52ヘルツのクジラたち[町田そのこ著]。
ざっぶ〜んと押し寄せた波が、心のホコリを流してくれました。
52ヘルツのクジラとは
52ヘルツのクジラとは、他のクジラとは違う高い周波数で鳴く、特殊なクジラのことだそうです。
その姿はまだ誰も見ていないし、周波数が違うために仲間のクジラには声が届かないという、世界一孤独なクジラ。
本書では、そんな孤独な52ヘルツのクジラと登場人物たちの境遇が重ねて描かれており、なんとも言えない儚さと美しさが随所に感じられます。
※書店員がいちばん売りたい本として、2021年本屋大賞に選ばれました。
読書感想文
自分の体験を主軸に、簡単に記録しておきます。
「ひとというのは、最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。(P224)
大人になって仕事を始め、親になり子供を持ち、年を重ねて後輩を持つようになった「今」だからこそ感じる、強い共感。
世の中の道理を説いているかのような一言に、もうすぐ90歳になる祖母の存在を思い出しました。
「こういうのは巡り巡って自分の番が来るもんじゃけえ。どんなに大変でも頑張るしかないんよ。あんたもそうやって育ててもらったんじゃけえ。」
11年ほど前に、長女の出産報告をした時に祖母からもらった言葉です。
「自分の番」
長く生きている祖母からの言葉には、ズシンとした重みがあります。
広島の中心地に住んでいて、若い頃に被曝で怪我を負った祖母。
一命はとりとめたものの、三世代同居で暮らしていた期間が長く、自分の居場所がなかなか見つけられなかったと、母から聞いています。
それでも、私が帰省するといつも「よう帰ってきたね〜。」と、大きな口を開けて笑い、断る私をよそに少ない年金から無理やりお小遣いを渡す祖母。
ひ孫が12人もいて、「名前が覚えられん」と目尻を細めながら、一人で畑を切りもりする元気な89歳です。(もうすぐ90歳)
寒くなってくると腰が痛いだの布団から出られないだのブツブツ言っている私は、祖母に会うたびに身が引き締まる思いでいっぱいです。
どんな困難も、祖母の言葉を思い出すと乗り越えられる気がするのは、祖母のマンパワーなのでしょうね。
それにしても、多くの世代が登場する小説は、何歳になって読んでもその時々の発見があります。
「52ヘルツのクジラたち」には、児童虐待、DV、狭い街での個人情報、たくさんの重い問題が出てきます。
そんな中でも前を向いて進み、他の人のために何かをしてあげたいという気持ちを持つ登場人物の存在が清らかで美しく、救われる思いで読み進めることができました。
終盤では、52ヘルツのクジラが自分のところにもやってきて、その姿を見せてくれたかのような錯覚が。
心の中に余韻がじんわりと広がり、生きていることに感謝している自分がいました。
小説家の人たちって、読み手の心の中に絵を描かせるアーティストであり、スマートに社会問題を提起する啓発活動家でもあるのかもしれませんね。
参考図書&リンク
↓今回の本です
↓私の数少ない「小説」の読書ノートです。
使った文具たちのご紹介です。
水彩色鉛筆は、大人も子供も、気軽に絵の具遊びができます。↓私が持っているのは、プレゼントしてもらったこちらのもの。お値段高めですが、滑らか〜な書き心地です。
↓子供と一緒に使うのだったら、こちらの方が気軽に使えていいかも。
↓お習字練習用にも使っている水筆ペン。1本あると重宝します。
↓長期保存するスケッチブックは、ずっとマルマンと決めています。
水彩色鉛筆を使うと、大掛かりな絵の具セットを出すことなく、水彩画を描けて便利です。
あとがき
2020.6に王様のブランチで紹介され、レビューや評判も良かったので読んでみました。
読んでよかった。
小説や文芸は読書記録に残すことは少ないのですが、この本は別。
読後の感情を無性に描きたくなって、すぐにスケッチブックを手にしました。
心が動いた時に、形に残るもので記録しておく。
私は、メモやノートの他に、スケッチブック、時には写真でも記録します。
そこに、今回はイヤリングも付け加えた感じです↓
いい物語を読んで、光り物が急に欲しくなって(笑)。(とは言っても4つセットで300円。近所の100円ショップで見つけたものです。)
情報カードの2つ穴にぴったりで、2つ組み合わせて留めています。
結構しっかりと留まります。かさばるので家で使う時限定ですけどね。
※普段の情報カードは、ペーパークリップで留めています↓
印象に残った本については、今回のように、写真とともにブログにも記録を残します。
イヤリングみたいな小物も含めて、全てが一緒になって脳裏に刻まれるので、読書の経験が何年経っても忘れない宝物になります。
最近はそれらの記憶同士が結びつく瞬間が度々あって、ああそういうことかと腑に落ちるのが、たまらなく面白いのです。
だから私は、これからも読書を続けます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今日も、良い1日を〜♪