もう意思決定に迷わない!VUCA時代の歩き方

世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜[山口周著]を読んでの、感想&あらすじのまとめです。

↓こちらで思考方法に関する本をまとめています。併せてどうぞ。

要約&感想

組織開発・リーダー育成を専門とする著者[山口周さん]が、複雑で不安定な現代社会を、スマートに駆け抜ける技を説いている本です。

論理的思考・MBAでは太刀打ちできない新時代において、質の高い意思決定をするためには、卓越した人格に加えて「直感」と「感性」が必要。

その「直感」と「感性」を磨くには、一見するとビジネスには関係のない哲学、文学、アートなどで「美意識」を鍛えるのが近道だ、というのが話の中心です。

そこに、実際の企業の成功例・失敗例、マーケティング、マインドフルネスまでつなげた議論を展開しています。

うわ〜。そういうことだったのか!と腹落ちする場面が多く、世界の見え方が変わりました。

とにかく解説が丁寧なので、経営者ではなくマーケティング知識もない私が読んでも、終始楽しめる内容でした。

↓つい先月読んだ「独学の技法」も、知性の可能性が広まって面白かったです。

読書ノート

大まかなあらすじを思い出せるように、図をメインにしました。

※自分用のまとめノートです。言い回しや内容が違う箇所も多くあります。詳しくは本書をご覧ください。

経営におけるアートとサイエンス

では、著者の語っていた「経営におけるアートとサイエンス」の世界を、箇条書きで記録しておきます。

↓まずは、時代背景について。

VUCA時代とは

最近よく耳にする「VUCA(ブーカ、またはブカ)」とは、次の4つの頭文字を取ったものです。

  • Volatility(変動性・不安定さ)
  • Uncertainty(不確実性・不確定さ)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性・不明確さ)

AIをはじめとする超情報化社会、コロナ禍の到来、度重なる天災など、予測ができない現代社会のことを表現したキーワードです。

高度経済成長期だと、過去のデータを参照してより良いものやサービスを提供していけば安泰でしたが、そう単純な話ではなくなってきました。

このようなVUCA時代において、サイエンス(分析・論理的な情報スキル)重視の意思決定では、ビジネスで勝つことができない。

本書には、その理由と対策が詳しく書かれています。

サイエンス主導の限界

サイエンス(分析・論理・コンサル)主導が限界を迎えている3つの理由:

  • 正解のコモディティ化
  • ルールが追いつかない
  • 自己実現的な消費傾向

※言い回しや順番が違います。詳しくは本書P14〜参照

↓簡単に解説

正解のコモディティ化

現代は、あらゆる便利なモノや情報が市場に出回っており、正解のコモディティ化が進んでいます。(どの商品も情報もそこそこ良くて、どんぐりの背比べ状態。)

過去データにもとづいたサイエンス主導の経営では、差別化ができずに苦しみます。

ルールが追いつかない

次々に新しいモノやサービスが出ているので、抜け道やグレーゾーンを利用する人が多出しています。

分かりやすく一般人で言うと、マスクの高額転売、Go To Eatキャンペーンの不正受給などもその一例です。(やっている時点で法は犯していない)

そして、対応のほとんどが後手に回っています。本書では、実際に逮捕された企業の幹部の話が出ており、倫理観・道徳観について考えさせられました。

「法律は守っているから大丈夫」ではない時代。個人に倫理的な価値観が求められており、企業もしかりです。

だから、今までの検証方法で社内OKが出ても、法に触れる事態が起きるのですね。

自己実現的な消費傾向

モノを購入する時、ファッションの一部として購入する傾向が、全世界に見られるようになってきました。

例えばパソコン一つとっても、「ただ機械として使えればいい」で買うのではなく、「そのパソコンを持っている自分」を想像してからamazonや楽天でポチっと押す人が多いのではないでしょうか。

それゆえに、儲けの数字だけを追い求めた美意識のない企業は、淘汰されてしまいます。

マズローの欲求5段階でいう、自己実現欲求を満たすような商品を、消費者が求めているということです。

参考:マズローの法則については、こちらでまとめています。(ワークシートあり)↓

https://life.conote.info/archives/1309

では、何をよりどころに判断を下せばいいのか?

筆者の考え↓

究極の意思決定において、最終的に頼れるものは美意識(直感と感性)である。

もちろん、非論理的ではなく、あらゆる事態を考え抜いた上での判断です。


もう少し具体的に言うと、外野の意見は参考程度にとどめておき、自分(会社)の中に倫理的に正しい「真・善・美のモノサシ」を持って判断するのが賢明と言うことです。

「外部のものさし」から「 内部のものさし」へシフトするイメージ↓

「文化的な価値の創造で、社会問題を解決する。」

この理念を掲げている会社、最近増えてきましたね。

個々人がこのような意識で仕事をすると、世界中が輝きそうです。

※詳しい内容は、本書P187〜:第6章「美のモノサシ」をお読みください。

↓ここからは、経営とマーケティングを掛け合わせた話です。

アート主導の経営へ

先ほども触れた、自己実現的な消費傾向。

生き残るために、企業はどこを目指せばいいのか?

↓結論↓

アート主導で、他の人がコピーできない認識と世界観を確立する

「真・善・美」が感じられる企業理念やストーリーには、共感が集まります。

代表例としてよくあげられる「パタゴニア」は、環境を守る活動をするための資金を、アウトドア用品を売ることで集めるところからスタートしています。

↓「社員をサーフィンに行かせよう」創始者であるイヴォンさんの経営哲学に触れることができる本。

■利益のためではなく、地球を守るため。
■社員を大事にし、遊び心を忘れない創業者。
■商品を買うと、環境保全の一翼を担える。

お値段はお高いけれど、パタゴニアのフリースを選ぶ人が多いのも納得です。

美意識のある構想や創造が、人の心を動かす。

↓経営のイメージ図。書き込みすぎて複雑怪奇になりましたが(笑)、今のところこれで腑に落ちています。

↓普通の会社が陥りやすい状況。

アート人材の意見は感覚的なところがあるので理解されにくく、アカウンタビリティー(説明責任:言葉で説明すること)能力が低い。

それに対してサイエンス人材とクラフト人材は、データや事実が証明になりアカウンタビリティーが高いので、この2つの人材の意見に偏りがちです。

そうすると、美意識のない(他との差別化ができない)似かよった製品しか作ることができず、コモディティ化の中にどっぷりハマる。

質の良いものを創造できても、そこに美意識なりストーリーなりがなければ、すぐに真似をされて、追い越されます。

結果、スピードと価格で競争するしかなく、レッドオーシャンに突入する構図に。

教訓:美意識のないデザインとテクノロジーは、簡単にコピーできる。

だから、アート主導で、他の人がコピーできない認識と世界観を確立する必要があるのです。


しかし、アートだけではナルシスト的な経営になってしまうのも事実。サイエンスとクラフトが縁の下の力持ち的な役割を果たすのも事実です。

バランスを保った上で本質を追求する。

本質の追求とは、選択と捨象を繰り返すことです。

なにをしないのか決めるのは、なにをするのか決めるのと同じくらい大事だ。会社についてもそうだし、製品についてもそうだ。
スティーブ・ジョブズ

経営におけるアートとサイエンスP80

具体から抽象に行くにつれて、濃厚なエッセンスのみを残していく。そのエッセンスは、あらゆる表現への転用が可能です。

  • 視覚的に表現=デザイン
  • 文章で表現=コピー
  • 経営で表現=ビジョン&戦略

↓こちらの本も参考になります。

世界観を確立している企業の製品は、価格競争があっても強いです。

例えば私は、アップルの製品が好きでiphoneやMacBook Proを使っています。

別の言い方をすれば、「アップルの製品を持っている自分」が好きで、機能的には似たようなものも販売されていますが、アップルがいい!と思ってしまうのです。

アート主導で、他の人がコピーできない認識と世界観を確立する


〜余談〜

この考え方は、生き方にも言える気がします。

何が正解かよくわからないこの時代、行動や考え方が「美しい」人には共感が集まり、たとえそれが遠回りになったとしても、その人の人生は充実しているのではないでしょうか。

「美しい」と人が感じるとき、それはなにがしかの合理的な目的に敵っている。

経営におけるアートとサイエンスP28

ドイツの哲学者イマヌエル・カントの言葉を、筆者が解釈した文章です。

美しい立ち居振る舞い、スマートなお金の使い方、人との絶妙な距離感、、、これらは、ただ美しいだけではなく、生きづらさをなくすための手法となり得ます。

この「美意識」の感覚を、忘れないようにしたいです。


参考図書&リンク

↓今回の本は、新書・電子版の合計で17万部突破(2020.10現在)のベストセラー。

↓漫画版もあります。最初に図解があるこちらを読めばとっつきやすかったかな。

参考1:↓予測不可能な時代において必要な力「ネガティブネガティブ・ケイパビリティ」についての本です。

参考2:↓私のようなクラフト型人材に必要な力について書かれた本です。

あとがき

山口周さんの本を読んだのは、これが2冊目です。

自分には到底真似できないような、高度な思考回路をお持ちなので、内容を咀嚼するのに時間がかかりました。

アート、サイエンス、クラフトの考え方を、IT企業に勤めている旦那さんに話したら、「それって、デザイン、テクノロジー、マーケティングのこと?」という返事が。

色々な考え方があるのですね。私はまだまだ知らないことが多いなって、毎回思います。

P218に書いてあるVTS(visual thinking strategy)も、初めて知りました。お習字の臨書や、デッサンの模倣も、それにつながるのではないかな。

私は世界のエリートではないけれど、美意識を鍛えていけば、もっと人生における色々な選択が楽になりそうな気がします。

久しぶりに、美術館に行きたくなりました。


印象に残った一文の引用で、しめくくります。

私たち全員が、「社会彫刻」に携わるアーティスト。

経営におけるアートとサイエンスP30

こんな考え方ができると、素敵。

生きづらさを抱えがちな現代社会に住んでいますが、心だけは高貴に、美意識とともに歩き続ける人でありたい。

だって、日常的な「生活」や「仕事」の営みが、積み重なって100年後の世界を創っているんだから。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今日も、良い1日を〜♪